コーヒー石臼の特徴

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「石臼で挽いたコーヒーは、美味しいですか?」

「石臼で挽いたコーヒーは、美味しいですか?」 どこへ行ってもこの質問は必ず最初に出ます。
なるほど、率直な質問でもっとも知りたい部分ではありますが、「美味しい」とは非常に抽象的で 、毎回答えには苦労しとります。
コーヒーには特別興味はなさそうで、多分話の種にと聞いてくる人には「美味しいかどうかは、豆しだいで石臼で挽く事は 気分の問題でしょう」と答えると「やっぱり、そうやろ」と大いにうけます。
見るからに興味津々の人には、持てる知識を総動員して「美味しい」事を説明します。
石臼で挽いた場合の一番の特徴は若干まろやかな感じに抽出されます。
コーヒー豆を小さく切るのではなく、割る事で小さくするために、コーヒー豆屋さんで挽いてもらった粉とはまったくの 別物になります。
市販のミルの場合は豆を切る部分のすき間を調整する事で粉の大きさを調整しますが、石臼の場合は上臼の一回転 あたりに投入するコーヒー豆の粒数で調整しますので、かなり大ざっぱな調整になります。
結果として、市販のミルの粉は粒状が揃いますが、石臼の場合は「ほぼ揃う」程度で決して一定しません。 コーヒー関係の本には「粉は均一」とありますが、私のコーヒー石臼では「粉はゆらいでいます」 この点でも、豆屋さんで挽いてもらった粉とは別物になります。 まったく同じコーヒー豆であっても「石臼」で挽いた場合は、「豆を割る作業と粒状の揺らぎ」で違ったコーヒーに なり「まろやか」と表現しています。
ほとんどの方が重要視されませんが「挽き立て」も「石臼」の重要な特徴です。 コーヒーを入れるたびに「豆を挽く」と言われる方は、相当なコダワリのある方で、相当苦労も多いのではと思います。
私の石臼は「挽き立ての粉」で毎回コーヒーを楽しむための道具、として製作を始めたようなもので 手入れは一切必要なく、石臼を回しながらコーヒー豆を投入するだけの、ほんの数十秒で「挽き立ての粉」が出来ます。 この「挽き立て」の威力は相当なもので、コーヒーの香りは部屋中に一気に広がります。 コダワリをお持ちの方は一度お試の価値があると思います。
以前、購入して頂いた女性のお客様から「私と石臼君の息がやっと合うようになりました」 「主人との至福のひと時を、ありがとうございました」とお手紙を頂き、職人として非常に勇気づけられました

コーヒー豆を挽く(割る)仕組みの違い

左の写真が一般的に3000円ほどで市販されている「手回し型の珈琲ミル」ですが、上部の器のような部分に珈琲豆を一度に入れて、ハンドルを回転させると 「プロペラ」のような部品でコーヒー豆を巻き込みます。
巻き込まれたコーヒー豆は内部の「刃」と「歯車」で設定の粒にする構造になっています。
本格的な物をのぞけば、その大半は本体を左手で押さえて右手でレバーを回転させながら豆を切っていくわけですが、 何の補助する力もないために相当な作業になってしまいます。


右の写真は石臼でコーヒー豆を粉にする「目」の部分です。
石に溝を切り込んだ単純な構造ではありますが、単純ゆえに「溝の形状・幅・深さ」の組み合わせは複雑で繊細です。 豆の状態から一気に粉まで挽く必要があるため、その「目」の形状は企業秘密でお見せ出来ませんが、複雑な組み合わせになっとります。
市販の手回しミルの場合は、粉を挽くためには自分の力だけですが、石臼で挽く場合は「石の重さ」が力を補助してくれます。 上臼の重量が豆を割ってくれますので、回す力は臼から粉を押し出すためだけに使いますので、想像よりはるかに軽く回せます。

風味を害する熱

次に「熱」の問題ですが、珈琲豆店などにある「電動式のミル」では、200gや300gをほんの数秒で粉砕し その機械から発生する「熱」で「風味」の劣化(気化)が出てしまいますが、 石臼の場合は、石自体が冷たく熱を吸収する事と、少量づつ挽くのでまったく「熱」の発生はなく「風味」は保たれ、 さらに珈琲の香りが部屋中に漂います。

石臼での粉

珈琲の重要な要素である粉の大きさ(細さ・粗さ)に付いてですが、「中挽き」が一般的で、また何の疑問も持たない方 が大半だと思いますが、粉の大きさで珈琲はどんどん変化して行きます。
「細挽き」の場合は、その豆の持つ特徴をほぼすべて抽出しますが、「粗挽き」になるにつれて「渋み」「苦味」の両端をさけて中心部寄り の風味のみを抽出します。
粉の粒子の調整は市販の珈琲ミルの場合はダイヤルなどで簡単ですが、石臼の場合は豆の粒の大きさの違い、焙煎の程度の違い を考慮し、投入する豆の数と回転スピードで調整します。
文章で表現した場合には非常に難しい感じがしますが、長年使い込むとその微妙な部分が楽しみに変わると思います。
一杯の珈琲の中に「細挽き」「中挽き」「粗挽き」が混在するような事も簡単に出来、使い方しだいで個性的な珈琲が味わう事が可能ですが、 逆に言うと、一定の状態で粉を払い出すまでには熟練が必要にもなります。

「目立て」

コーヒーを挽く為の「目立て」に付いて説明します。 石臼おける「目」とは、材料を粉にするため石に刻み込んだ「溝」の事です。
穀類を完全な粉状にするために石臼は使われて来ましたが、その同じ石臼で珈琲豆を挽いた場合 微粉末になり間違いなく目詰まりを起こします。
コーヒー用の石臼は微粉末が出ない事が前提のため「穀類」用の石臼とは、まったく違った作りになります。
もっとも重要な「目」は穀類用とはまったく違う切り方で微粉末が発生しにくくなっており、必要に応じて「粗挽き」でも 払い出せるようになっています。
また、「目」の図案も工夫して、最終的に臼の中に残ってしまう「挽きかけ」の豆の量がなるべく少なくなるようにしました。 テーブルの上での使用が前提ですので、直径も極限まで小型化しています。
その結果、目詰まりはまったく無くなり、使用ごとに内部の粉が入れ替わり石臼を開けて掃除する必要がなくなりました。
中国からの輸入品の一部には微粉末で「目詰まり」を起こし、その都度、開けてブラシで溝の粉を掃除する 商品もあるらしいのですが、石臼コーヒーを広めて行きたいと常々考えている身としては非常に残念です。

デザインの基本は必要充分な重量の設定から始めます

上臼の重量は7sから9sで設計していますが、7sより軽いと上臼が豆の硬さに負けてしまい 浮き上がりやすくなり、豆の投入を慎重に少しづつ行えば使えない事もありませんが 日々使う道具としての石臼としては実用にならないと思います。
一部、他で市販されている小型に仕立てた石臼の場合では、上臼の重量が軽い為「最初にコーヒー豆を軽くたたき砕いて から石臼に入れて挽き始めて下さい」と言った注意書きがある物もあります。
また極端に重くすると、豆を潰す力が大きくなりバリバリ挽けますが豆の投入が少しでも遅れると 微粉末が発生しやすくなります。
次に下臼の重量設定ですが、他の市販品のコーヒー石のほとんどは上臼の重量に対して下臼の重量が不足しているため 臼を回すと、下臼まで一緒に回ろうとしてしまい、下臼が動かないように左手で押さえながら右手で上臼を回転させ ますが、コーヒー豆を穴に入れるのは左手ですので、その都度回転を止める必要があり非常に面倒な作業になって しまいます。 (これは市販されているハンドミルの場合も同じような事ですが)
基本的に石臼で材料を挽く場合、左手は材料を材料投入穴に入れる作業を担当します。
常に回転を止めないで、右手で一回まわすと左手で豆を2〜4粒穴に入れる、また一回まわすと2〜4粒穴に入れる。 この作業の繰り返しで安定した粉が挽けるわけですから、下臼は上臼の回転をドッシリ受け止める必要があります。
そのため下臼の重量はほぼ上臼と同じで設計し、下臼を左手で保持する必要はありません。
この事は非常に重要で、上下臼合計で17s〜19s程の重さにビックリされる方がおられますが 使ってみるとその重量とは逆に、回しの軽さに感心されます。
そう頻繁に置き場所を換えられる事はないと思いますので、完全に挽きのみに重点を置いて設計しております。
擂り合わせ面の直径は15p(5寸)、雑穀用の一般的な石臼の直径が30p(1尺)以上なのに対して 半分で製作していますが、2人分を挽くコーヒー臼とした場合この大きさにたどり着きました。 (店舗向けは多人数を挽く事を想定し、直径は18p(6寸)で設計してあります)
逆にこれより直径が小さいと、豆の投入を極端に少なくする想定での設計は出来ますが実用的ではありません

取って棒を取り付ける台の部分の取り付け位置に付いて

回転させる場合、その円周にそった方向へ水平に力をかけ続ければ安定して回転するのですが、 実際には円周より内側へ力の方向がそれてしまいます。
その場合内側へと上臼を引き起こす力が働き、上臼と下臼の接圧面にかかる力が一点に集中してしまい 、力が回転に集中せず臼を押さえる力に変わってしまいます。
この現象は上臼の重心点より棒の取り付け部が高い位置になれはなる程、大きく発生しやすくなります。
その事を少しでも改善するために、棒を刺す穴の台は出来る限り下の位置に設計してありますので、意識しなくても 上臼の重量を受けて素直に回す事が出来ます。
一般的な石臼は取ってを刺す穴の台は別体で作り最後に組み合わせるのですが、 最も力のかかる部分であり、ガタツキがあってはならないし、ガタツキが発生する可能性も あってはならないので、私の場合は本体との一体で製作しております。
材料段階の石材は取って台も含めた寸法ですから長方形なのですが、取って台の部分を作成する段階で その周りの石を切り落としてしまうのですから、石材のロスが非常に多く、加工は高度になり、 時間が掛かりますが永久に外れることもガタツキも発生しません。

握り棒の取り付けに付いて

通常の石臼の場合は、臼に四角のホゾ穴を開け、握り棒とその台が一体になった木製の部品をその穴に打ち込む方法が取られます。 この方法の場合、臼を洗う場合取り外せませんが、無理に抜き刺しを繰り返すと木の部分が磨耗してしまいガタツキがでます。 又、長年の使用でも石と木の組み合わせですので、ギシギシ音がでたり回している途中で外れてしまう事があります。

削りだし

私の臼の場合は握り棒とその台を別々とし、握り棒の台を石で作る事にし、耐久性も考え上臼本体から削りだしとしました。 このため台には上から直径20oの穴を開け、その穴に握り棒を差し込みますが、臼を洗う場合は握り棒を引き抜くのみで簡単に外れます。 難点としては削りだしの加工に高度な技術が必要となり、原石の寸法がその分大きくなります。

挽けた粉

挽けた粉は、一般的な石臼の場合は上臼と下臼の合わせ目から下臼の側面を伝って落ちます このため石臼の下にはあらかじめ新聞紙やビニールシートを敷いておくのですが、そのシートに積もった粉を 何らかの方法で集めフルイに掛ける事となります。 乾燥された脂分の無い材料、例えば「米」「麦」「蕎麦」等はサラサラと落ちますが、脂分の多い「胡麻」等はペースト状になり 下臼の側面にベッタリ張り付いたり、水を加えながら挽く場合などは大変な苦労になります。

下臼を皿状に変化させた石臼

粉を敷物の上へ落とさない、ペースト状のものを挽く場合のために、下臼を皿状に変化させた石臼もあります。 この臼の場合は皿状になった下臼に溜まった、粉あるいはペースト状のものをハケなどで流し口の下に差し込んだお皿のような物に はき落とす事となります。 ※現在ではこの形状が主流になっていると思います。


粉の回収

私の臼の場合は挽いた粉・ペースト状のものは下臼の上部にドーナツ状に彫った溝に溜まり、上臼に取り付けた刷毛が 回転ごとに回収し、落とし穴より下に置いた容器へと落とします。 セット出来る容器はだいたい直径10p・高さ7〜8pとしています。



「手がかり」

一般的な石臼の場合の持ち上げる時、手を掛ける「手がかり」は上臼の場合は握り棒の対角線上に一箇所 下臼の場合は対角線上に二箇所、それぞれ凹を切り込みます。 ※時には、まったく「手がかり」を付けていない石臼も見かけますが、、、、、。



「手がかり」とするデザイン

私の石臼の場合は、味気の無い凹はどうにも我慢がならず、逆に凸を付ける事で「手がかり」とするデザインにしました。 結果として、手を掛ける部分としては見えず、しかし持ち上げる場合は全周どの位置でも手を掛ける事が出来ます。

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